2022年5月にweb受験した「図書館概論」の科目終末試験の問題と解答例になります。
見直せば修正したい箇所は多々ありますが、試験で実際に提出したものをそのまま掲載させていただきます。少しでも参考になればと思います。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
「図書館概論」科目終末試験〜2022年5月問題〜
図書館の五法則の「図書館は成長する有機体である」について、現代の公共図書館に当てはめて、できるだけ具体的に説明してください。
*字数制限なし
「図書館概論」科目終末試験〜解答例(95点)〜
ここでは、図書館の計画と組織化に関わる基本を述べている。図書館が成長する有機体であるとは、図書館が生物体であるかのように思えるが、物理的な成長とは、図書館の資料の増加、利用者の増加であり、職員も増え、建物も拡張されることである。図書館の成長を支える基礎は資料の増加で、それは利用者の伸びに関連する。成長した図書館には図書館サービスを運営する適切な数の職員数が必要である。成長をやめた有機体は消滅していくが、成長なき図書館も同じ運命をたどることになる。現代の公共図書館に当てはめ、具体的に説明する。
(1)資料の増加
学習には、図書、雑誌・新聞、パンフレット等の印刷資料とネットワーク情報資源が不可欠であり、これらを利用することによって学習が行われる。現代では、インターネット等の情報技術が急速に発達し広く利用され、大量の多様なネットワーク情報資源がインターネット上で公開されている。これを背景に現在、二次資料の多くがデータベースとして公開され、また一次情報の公開も広がりつつある。このため、図書館に対して新しい役割が求められている。インターネット端末の整備、リンク集やパスファインダー等の整備、ネットワーク情報資源の利用促進、郷土資料・地方行政資料や専門的コレクション等の内容を電子化しウェブサイトでの公開、利用者への情報活用能力の学習機会の提供、等である。これまでの図書館は、貸出サービスが中心で、レファレンスサービスは不十分であった。多様化、高度化する地域住民の学習ニーズに対応して、地域の課題を解決するために、レファレンスサービスの充実が求められている。
このように、資料の数だけでなく質が求められているのが現代である。利用者の学習ニーズに対応したものであること、地域課題の解決するものであること、またそこに達するためのレファレンスサービスの充実も求められている。
(2)利用者の増加
これらは、図書館サービスの充実に伴い増加するものであるが、これを積極的に行うものとして、広報活動、利用教育がある。
広報の意義は、潜在的な利用者も含めて図書館サービスのことをよく知ってもらって利用するかどうか判断するための材料を提供するところにある。知らなかった人が知ることによって利用するということだけでなく、知ったけれど利用しないということについても判断するのに十分な材料が与えられる必要がある。
利用教育の意義は、利用者が図書館サービスをより効率的・効果的に利用するようになることが挙げられる。また、社会教育機関としての生涯学習支援の機能も上げられる。図書館を通じて情報リテラシーを身につけ、自己の確立、社会との関係を模索・探究することができることを実体験として認識すれば、利用者の増加につながる。
(3)職員数の増加
現状としては、専任職員の減少と非常勤・派遣職員の増加がある。そして、委託・派遣職員の増加が顕著に現れ、正規の雇用職員が減少している。正規職員の定員を補充するために非常勤・臨時職員、委託・派遣職員が多数配置されている。非常勤・臨時職員、委託・派遣職員は、雇用契約期間が決まっており、3〜5年の雇用期間が多く見られ、図書館業務を担う職員の業務の蓄積と継承が難しい状況を生み出している。この現状の中、組織として維持するには、利用教育実施マニュアルの作成や館員研修など、組織として環境整備を行うことが求められる。
またただ職員数が増えればよいだけではない。司書は、地域住民の生涯学習の直接的な支援をその職務としており、多様化、高度化する地域住民の学習ニーズに対応して、その果たすべき役割に対する期待はますます高まってきている。その役割は、学習者個人の特性の理解につとめ、各々が学習の目的を達成できるよう最善の支援を行うことである。しかし、個々人を個別に理解し、個々への対応を行うことには限界がある。そこで、学習者に共通する特性や解決すべき課題を踏まえ、その上できめ細やかな教育的配慮をもって学習者の学びの過程を支援していくことが望まれる。支援の際には、個人の要望を満たすだけではなく、社会の要請とのつながりを提供し、社会での自分の立ち位置を模索する機会を与えることも必要である。垂直軸と水平軸の教育を支援するのである。また、図書館業務に関する知識に加えて、IT技術、経営管理能力、社会の変化や地方公共団体の行政に関する知識、地域の関係機関と連携・協力するための広い視野と行動力が必要である。この多様化、高度化するニーズに対応するために、専門職としての自覚を持ち、自らが生涯学習を実践していくことが求められる。
(4)建物の拡張
図書館とは、先に述べた資料や情報を、司書等の専門的職員が中心となって、収集・整理・保存し、閲覧・貸出・複写・レファレンスサービス等によって提供する組織である。図書館は、設置者、設置の目的、利用者等によって、公立図書館、私立図書館、学校図書館、大学図書館、専門図書館、国立図書館の六つの館種に分かれる。公立図書館・私立図書館はあらゆる分野の資料を収集し、一般の人々に広く公開される。図書館は、サービスの向上と運営の効率化のために、日常的に連携・協力している。その中心は資料の相互貸借と書誌情報の提供である。このように、各館種が利用者に応じて、直接的または間接的に生涯学習支援を行っているのである。
現代では、ただ単に建物の物理的な拡張ではなく、求められているのは、館を超えたつながりである。上記のような相互協力のみならず、文書館・博物館などとのMLA連携を通じたデジタルアーカイブ化など、図書館に求められる成長は幅広い。
(2315字)
感想
「科目終末試験問題」に類似問題があり、また先輩方のブログで過去問として情報を得て準備していた内容でしたので、関連部分をピックアップしながら、概ね落ち着いて解答できたと思います。「現代の公共図書館に当てはめて」という部分をどのように書くか、考える必要がありました。「結語」に当たる部分を書く時間がなかったのが反省点です。
「科目終末試験問題」 1. 図書館学の五法則とは何か説明してください。 15.図書館の職員について、現状を含めて説明してください。

レポート作成で2000字書くことが身についたためか、長めの解答となってしまいました。「生涯学習概論」の試験と同様に、ここからもう少し内容を削る作業をするはずが、試験中にはそんな時間はありませんでした。

「図書館概論」は総論的な内容になりますので、試験対策をする際も試験中も、他の科目のテキストを参考にすることが多かったです。私は全てのレポートを書き終えてから試験に臨んだため、「図書館概論」を1回目の試験で受験しました。テキストの学習範囲が全てを網羅できていない場合は、「図書館概論」の試験は後半に受験した方が、よい解答ができるかもしれません。

多くの方が「図書館概論」を最初の方に学習するかと思います。
全てのテキストを読み終わってから再度勉強し直すと、図書館、司書の全体像がより濃く理解できるような気がしました。「あ〜これはあれのことを言ってるんだな、」と、自分の学習を経て、それぞれの内容を少し深く理解できたことを実感できました。
試験で使った参考資料
「図書館概論」を受験するために必要なレポートについては、別で記載しています。
科目終末試験について、総論的なことを記載しておりますので、参考になれば幸いです。