2022年4月入学の「図書館制度・経営論」レポート解答例になります。
文章の構成など、少しでも参考になればと思います。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
「図書館制度・経営論」レポート設題
組織作りの諸原則の5項目を取りあげ、それぞれについて述べるとともに、図書館法第3条(図書館奉仕)に掲げられている九つの事項の学びから、これらを実現するためにはどのような図書館組織の構築が望ましいか、貴方自身の考え方を含め論じて下さい。
*「レポート作成上の留意事項・ポイント」、「総評基準についてのメッセージ」にも、レポート作成のヒントがありますので、レポート作成前にも後にも読むことをお勧めします。
「図書館制度・経営論」レポート解答例
1.序文
図書館組織とは、図書館の理念に基づく目的を具体的に達成する仕組みである。組織の有り様によって、図書館運営は大きく左右される。図書館法は、「図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もつて国民の教育と文化の発展に寄与することを目的」として1950年に定められた。組織作りの諸原則の5項目について述べ、図書館法第3条(図書館奉仕)を実現させるために望まれる図書館の組織構築について、述べる。
2.組織作りの諸原則
組織を作るときに留意すべき諸原則がある。
(1)スカラーの原則
組織の階層構造についての原則である。組織を上層部から低層部まで複数の階層に分け、階層ごとの責任・権限を明確にする。責任と権限のバランスが重要である。自分の権限を越えた問題が発生した場合に誰に指示を求めるか明確になり、自分の業務を安定してこなし、組織が効果的に機能する。これにより命令が上から下まで、迅速に一貫して流れるようになる。
(2)専門化の原則
組織では業務を分業し、専門性を持つことで生産性の向上が図れる。専門性を持つことで熟練し、ミスを減少させ効率化が達成でき、向上心が生まれる。これは、生きがい、働きがいにも関わり、重要である。
(3)命令一元化の原則
業務においてメンバーは、常に1人の上司から命令を受けるようにする。複数から命令を受けると、矛盾が生まれ、業務が混乱し、業務効率が大きく低下する。
(4)管理範囲の原則
1人の管理者が直接的に管理できる部下の統制範囲には限界があり、範囲を超えるとコミュニケーションが困難になるなど、管理効率が低下する。個人の能力に差はあるが、通常は10人程度と言われている。スパン・オブ・コントロールとも言われる。
(5)権限委譲の原則
日常繰り返し起きる問題や定型化業務については、上司は部下に権限を委譲すべきである。上司は、非定型化業務やより重要な問題、例外業務について意志決定すべきである。
3.図書館法第3条(図書館奉仕)
図書館法第3条では、図書館奉仕について例示的に列挙されている。図書館の本質的機能は情報提供であり、奉仕の本質は資料提供とレファレンス業務にある。これにより利用者の自主的精神に満ちた人格の完成を目指す自己教育に資するとともに、生涯学習に貢献することになる。奉仕部門を組織する場合、その機能によって、閲覧・貸出機能、レファレンスサービス機能などに分けられる。
(1)閲覧・貸出機能
図書館法第3条第一号、第二号、第五号、第七号では、資料の収集・提供について例示されている。例えば貸出・返却について、窓口機能を人が行うのか、機械で対処するのかを決める必要がある。自動貸出・返却機が導入されており、利用者自身が貸出・返却を行い、専任職員はレファレンス業務等、本来の専門職に従事することができる。人的資源の効率性、サービスの効果性が向上する。また、貸出・返却窓口に人を配置する場合でも、非専門職性の高い仕事であり、臨時職員や外部派遣に依頼する事も検討される。このように業務を分業化し階層を持たせることで、専任職員は専門業務に専念することができ、向上心・やりがいが生まれる。また、日常的に行われるため定型化業務が生じやすく、権限を委譲することも必要である。
(2)レファレンスサービス機能
第三号ではレファレンスサービスについて、第四号・第九号では図書館や他施設間の相互協力について、第六号・第七号・第八号では図書館利用教育について、例示されている。レファレンスインタビューは、図書館業務の中でも最も専門職制の強い業務であり、間接業務であるレファレンスツールの蔵書構築業務とともに、組織化には十分な配慮が必要である。また図書館の相互協力や利用教育を行うことは、利用者の自己教育だけでなく、生涯学習、情報拠点化や地域の課題解決につながる情報センターとしての図書館の重要な役割である。館として方向性を持って一元的に活動を進める必要がある。
4.結語
図書館組織の構築においては、社会的ニーズを的確に把握しなければならない。ニーズに合った図書館の目的を実現するためには、高い理想と目標が不可欠である。ニーズとの適合性を確認するには利用者(顧客)からのフィードバックが重要である。また、興味深い視点として、顧客満足と従業員満足は関連している。「従業員が、図書館の使命に沿って顧客を満足させていれば、従業員も同様に満足することになる。満足を生み出すつながりは、顧客から従業員に至るまでつながっており、当然のことながら、従業員の態度、動機、技能そして知識に大いに依拠している」[1]。従業員が満足できる組織構築ができれば、それは顧客(利用者)の満足度につながる。つまりは、上記のように組織作りの諸原則に基づき構築された組織による図書館奉仕は、利用者だけでなく従業員にとっても満足度の高いサービスとなりうる。
引用文献・参考文献
・引用文献
[1]Peter Hernon, John R.Whitman(著)、永田治樹訳『図書館の評価を高める』丸善
・参考文献
岩猿・大城・浅野『大学図書館の管理と運営』日本図書館協会
講評
学習・理解はできています。参考文献の活用も評価できます。後者の柱では、「奉仕部門組織」に関することのみならず全体の図書館組織(職能別、主題別、利用者別、資料別組織など)への言及が欲しかったと思います。テキストのp.77-116の範囲における図書館組織の学習部分を再確認しておいてください。なお、巻末文献の書籍には、出版年も必ず記すようにして下さい。基本書誌事項の一つです。
感想
合格としていただきましたが、講評を読みますと不足している点が多かったと思います。設題が、「図書館法第3条(図書館奉仕)に掲げられている九つの事項の学びから」という文面であったため、奉仕部門組織について集中的に書いてしまいました。
この“図書館奉仕”を実現するために望まれる図書館組織の構築について書くのであって、“奉仕”のことを言及しているわけではない、ということでしょうか。とすれば、確かに図書館組織(職能別、主題別、利用者別、資料別組織)について記載すべきですね。書くべき論点がずれておりました。合格としていただき申し訳ないです。。先生の学んでほしいところを見事に外したレポートとなってしまいました。
ちなみに、先輩方のブログで「参考文献から引用文を入れるとさらによい」といった講評があることを拝見しましたので、引用文を入れています。論点がずれながらも評価いただき、ありがたいです。
また、講評にある通り、巻末文献の書籍には、出版年も必ず記す必要があります。完全に抜けておりました。皆さんもご注意下さい。

「図書館制度・経営論」を学んで、私は「組織作りの諸原則」なるものを初めて知りました。図書館が組織としてどのように機能すべきか、スタッフとしてどのように関わっていくべきか、目標とされる組織作りについて学びました。私は司書としての実務経験がありませんので、現場がどのように動いているのか実態はわかりませんが、会社と見立てたときの図書館のあり方について、知ることができました。
また、私の働いている職場も組織として上手く機能しているのか?という視点を持つきっかけになりました。
レポート作成で意識したこと、書き方については、こちらにまとめています。
随時更新していこうと思います。わかりにくい点や修正すべき点などがあれば御指摘下さい。
よろしくお願いします。