2022年5月にweb受験した「図書館サービス概論」の科目終末試験の問題と解答例になります。
見直せば修正したい箇所は多々ありますが、試験で実際に提出したものをそのまま掲載させていただきます。少しでも参考になればと思います。
*注* 解答例の丸写し提出は大学より禁止されていますので、参考程度に留めて下さい。
「図書館サービス概論」科目終末試験〜2022年5月問題〜
高齢者サービスについて、留意点とともに説明して、今後の課題を列挙してください。
*字数制限なし
「図書館サービス概論」科目終末試験〜解答例(91点)〜
高齢社会において、高齢者が直面する普遍的な変化である身体機能の低下、社会的役割の縮小・喪失などに伴う孤独感、疎外感、認知症などの疾病、このような高齢期に生じる「喪失」をいかに受け止め、乗り越えるかといった高齢期の課題解決に向けた学習への養成が高まりを見せている。高齢期の生活や学習を考える上で見逃してはならない点は、高齢者の生活の中に生じる「喪失」と「獲得」という対立する二つの概念である。どのような人間にも「(今よりも自分が)よくなりたい」「最後まで自分の人生には意味があると信じたい」という自己成長へ向かう欲求があるのと同時に、それを阻むさまざまな「喪失」という現実が高齢者の前に立ちはだかっているという認識に立ち、そのよい変化を引き出すために何が必要かという視点から社会教育・生涯学習の支援は展開される必要がある。社会の高齢化が進みつつある今日、高齢者サービスの充実がますます需要になっていく。高齢者サービスの意義、留意点、今後の課題について述べる。
(1)高齢者サービスの意義
高齢者サービスとは、高齢によって図書館利用に障害を生ずる場合にそれを取り除くサービスのことである。高齢者は成人でもあり、成人向けのサービスも利用することができる。成人向けのサービス等では十分に対応できないところを考えて応えていくところに高齢者サービスの意義がある。また、定年退職などにより社会とのつながりを失いがちな人々や地域のコミュニティから阻害されがちな人々をつなぎとめて交流を生み出すという意義もある。このように、高齢者の日常生活や彼らの内面世界が学習を通じてよい方向へと変化していくことを援助する営みの中にもその意義が見出されるといえる。
(2)高齢者サービスの留意点
視力や体力的な衰え、社会との接触機会が減少しているなどの条件の変化に伴い、要求する資料内容は異なり、その提供方法にも配慮が必要となる。若い世代とは違い、なかなか積極的に、また明確には要求を出さない傾向にある。したがって、押し付けではなく利用者が自分で選びやすいよう探しやすいように資料提供を行うべきである。
高齢者が求める資料は、主題と体裁に分けて考えることができる。主題では、若い頃から関心を持ち続けている領域に関しては、成人向けの資料で対応できる。高齢になって関心を持つ主題としては、病気や健康、住居や福祉など生活関連のものが挙げられる。また、余暇を過ごす方法を考えるときに役立つ趣味やレジャーに関連する資料も、求められるであろう。体裁としては、視力の衰えを負担に感じさせない大型活字本や、CDなど読まずに聞くだけで理解できるような資料もそろえることが求められる。
高齢者の中には体力が衰えて図書館へ来づらくなったり、視力が低下して活字が読みにくくなったり、さまざまな理由で図書館サービスを使いづらく感じる人々もいる。利用者自身が求める資料がどこにあるか容易にわかり、しかも、図書館職員の手が介在しているとは少しも意識されないくらいの施設・設備が理想となる。
定年退職によって社会から孤立してしまいがちな高齢者を結び付けるような文化・集会活動も望まれる。図書館は、仕事を離れ、子育てを終えた高齢者が、自分自身の生活を再構築し、地域社会に参加する「場」として、最も参加しやすい。資料提供のみならず、人と人との出会いの「場」となるからである。とかく孤独に陥りやすい、また、対人関係が狭くなりやすい高齢者にとって、世代を越えた人々と交流できる「場」の一つとして、公共図書館は充分に機能するべきであろう。旅行や山歩き、ダンスや詩歌などについて講演会や講座を開いてもよいし、自分の体験を話してもらったり作品を展示して見てもらったりするのもよい。高齢者に昔のことを語ってもらう「回想プロジェクト」では、地域社会からの疎外を防ぐ効果も期待できる。図書館は、疎外感を抱きがちな高齢者が気兼ねなく集まり、交流を深め、活発に活動する場となりうるのである。
(3)今後の課題
「アフリカでは、老人が1人亡くなると図書館が1つ消えるという。…高齢者は、過去と現在、そして未来を結ぶ仲介者であり、その知惠と経験は、社会にとってかけがえのない宝である。」とコフィー・アナンは述べた。今、高齢者が地域社会に参加する場が求められている。高齢者が自ら有する能力を十分に生かすことができる環境づくりを進めるとともに、高齢者をこれまでのような社会的な弱者として保護される人という謝った見方から、自立して活動する、地域社会の一因であるという見方へ、国民全体の意識を変える必要がある。図書館には、その拠点となることが求められる。
日本は世界でも類を見ないような高齢社会となり、今後も高齢化の加速は必至である。高齢者を対象とする学習支援は、世界の国々に先がけて高齢社会を迎えるわが国において、それを支える新たなパラダイムや文化を創り出す意味でも今後さらに重要な役割を担うものになっていくといえる。
(2050字)
感想
「科目終末試験問題」に類似問題があり、また先輩方のブログで過去問として情報を得て準備していた内容でしたので、関連部分をピックアップしながら、概ね落ち着いて解答できたと思います。
この科目では、「◯◯について、その意義と今後の課題を列挙してください」という設題形式が多いようです。そのため、テキストで学んだ各サービスや図書館の役割などの項目について、意義、留意点、今後の課題をまとめておくと良いかと思います。
「科目終末試験問題」 11.高齢者サービスとは何か、その意義とともに説明してください。

私の解答例では、参考書の文章を引用しています。
アフリカでは、老人が1人亡くなると図書館が1つ消えるという。…高齢者は、過去と現在、そして未来を結ぶ仲介者であり、その知惠と経験は、社会にとってかけがえのない宝である。
ベーシック司書講座シリーズ
この文章を読んだとき、ハッとしました。仕事で高齢者の方々に接する機会は比較的ありますが、子どもの頃に抱いた「何でも知ってる物知りなおじいちゃんおばあちゃん」という視点よりも、「弱者」という視点でみる割合が増えていたのではないか、と自分の考えを見直しました。
この文章を読んだのが試験時間中であったため、試験中になんだか感動してしまって、「今後の課題」の部分が書き切れませんでした。もう少し具体的に書ければ良かったかなと思います。

「図書館サービス概論」は、「図書館概論」と同様に、総論的な内容になります。そのため、試験対策をする際も試験中も、他の科目のテキストを参考にすることが多かったです。私は全てのレポートを書き終えてから試験に臨んだため、「図書館サービス概論」を1回目の試験で受験しました。テキストの学習範囲が全てを網羅できていない場合は、「図書館サービス概論」の試験は後半に受験した方が、よい解答ができるかもしれません。
試験で使った参考資料
「図書館サービス概論」を受験するために必要なレポートについては、別で記載しています。
科目終末試験について、総論的なことを記載しておりますので、参考になれば幸いです。